童子苑は、建築家・谷口吉生氏デザインのモダンな茶室で、一目見たときから気に入ってしまい、半年以上前から予約をした。
前日から会場を準備して、いよいよ当日。
同じ社中の先輩や後輩が12人もお手伝いに来てくださった。
席は、午前、午後の2席。それぞれお客様は12名ずつ。
お客様は、同じ社中の仲間、当日別のお茶会を開催していたにもかかわらず抜け出して来て下さった豊田市のT先生、わざわざ静岡から来て下さったM先輩、お誕生日にご夫婦で来て下さったT先輩、毎日文化センターの生徒さん達、大学の後輩達。
席の流れは、寄付→菓子席→濃茶席→点心席→薄茶席。
濃茶席と薄茶席、菓子席と点心席は同じ部屋を使った。
寄付の軸は、先々代家元・不染斎宗匠の鯛の自画賛。瑞気堂満(ずいきどうにみつる)の添え書きがある。
菓子席の軸は、当代家元・妙玄斎宗匠と私の師である尾関師の出会いの書。家元の書かれた春の字に、尾関師が添え書きをしている。
また、菓子席に道具飾りをしている。
菓子は「まん月」製の銘「よろこび」。せっかく豊田まで来ていただくのだから地元のお菓子を食べていただきたくて、私が幼いころから馴染みの和菓子屋さんに特別に作ってもらった。やや大きめに作った紅白の金団で、とても好評だった。
濃茶席の軸は、大綱和尚の詩。教訓的な意味と同時に、楽しむこと、すなわち、私のお茶に対するポリシーを表現するために選んだ。
花は紅白椿。苦労して活けたが、けっこう上手くいった。
花入は竹の輪無二重切で松尾流二代の翫古斎作で、三代一等斎の花押がある。250年位前のものだ。
四方棚のお点前で、水指は二代同年作の槍梅の絵。飴釉で、内側は銀色。
菓子席に飾った道具組みは上記の通り。
染付の龍の図の香合は、裏に嘉慶年製とある。嘉慶年は清の時代で約200年前位か。
茶器は、蔦の木をくり貫いて作った老松形の茶器。三代一等斎の花押がある。
茶杓は五代不俊斎作・南山寿。
茶碗は永楽保全作の朝鮮八道の写し。六代仰止斎の箱書。
軸を書かれた大徳寺の大綱和尚は幕末ころの方で、永楽保全や仰止斎宗匠の参禅の師で、大綱和尚のもとに、保全や仰止斎宗匠が久々に集った感じの演出を狙ってみた。
お点前の茶器には葵窯の加藤春二作の瀬戸文琳を使った。また、使いの茶杓は初代甫斎作。
主茶碗には、初心を表現したくて、本願寺伝来の一文字茶碗の写しを使った。萩焼の吉賀大眉作だ。
お点前は、話しながらしたので、正直細かい失敗を沢山してしまった。
点心席は、地元の料理屋さんに頼んだお弁当をお出しした。本来は全部手作りにしたかったのだが、余裕がなく断念。味噌汁のみ手作りした。
味噌汁は、何度も出汁のとり方から練習したのでお客様の声が気になったが、好評だったのでほっとした。
薄茶席では、茶器に織部好みの芽張柳蒔絵の棗を使った。松尾流六代の仰止斎の花押と箱書がある。茶杓は、西山松之助作、銘・恵比寿。西山先生は茶杓の専門家で、茶杓百選等の本を書かれている。
茶碗は清水六兵衛作の御本立鶴。
干菓子は、干錦玉の蝶と、有平糖の蕨で春を表現した。器は山本春次作の盆で、不染斎宗匠の花押がある。
最後にささやかながらお土産として、バレンタインに因み、京都の甘春堂さんの和三盆の紅白ハートと干錦玉製の青い鳥をお渡しした。
若輩者の私が、大掛かりなお茶会をするのは恐れ多いとも思ったが、開催して本当に良かったと思う。
お茶会を開く大変さは、想像するのと体験するのでは物凄く違うと感じた。
何というか、物凄いエネルギーを消耗する感じだ。
こういったお茶会を、年に何度もされる先生方には、本当に頭が下がる。
また、お茶会は一人ではできない。
今回、ベテランの先輩方に水屋詰め等を手伝っていただいたので上手くいったが、大勢のバックアップがあって、初めて席主としてお客様に応対できるのだと思う。
細かく説明しなくても、ある程度、各自の判断で動ける人達に手伝っていただいて、本当に助かった。
昔から、亭主七分客三分というが、本当に楽しんでお茶会をすることができた。道具も数年がかりで集めた甲斐があった。
今回、協力してくださった方々や遠方から来て下さったお客様にはいくら感謝してもしきれない。
本当にありがとうございました。
平成二十二年二月七日
宗名拝受披露茶会
於 豊田市美術館内 茶室 童子苑
寄 付
床 不染斎筆 鯛の画賛 竪物 瑞気満堂
菓 子 席
床 妙玄斎筆 春の字 一字横物 四季四本の内 添書 楽分庵筆 江山満花柳
濃 茶 席
床 大網和尚筆 楽 たのしみは みなくるしみの 種なりと 思はぬ人は 身をすつるなり
花入 翫古斎作 輪無二重切 一等斎在判
花 紅白椿
香合 染付 勾玉型 龍ノ図
釜 平丸筋 美之助作
炉縁 四君子蒔絵
風炉先 不染斎筆 木賊の図 同箱
棚 利休好写 四方棚
水指 八事窯 槍梅の絵 二代道年作
茶入 一等斎好 五つの内 蔦 老松形 在判 同箱 外箱仰止斎
仕服 小石畳折枝唐花丸緞子
茶杓 不俊斎作 銘 南山寿 筒箱共
茶碗 松尾家伝来写 朝鮮八道 箱仰止斎 保全作
替 萩 本願寺伝来一文字写 大眉作
帛紗 花卉聖樹紋モール
建水 春慶塗 曲
蓋置 萬古焼 オランダ写 瑞山作
菓子 銘 よろこび まん月製
器 縁高重
以 上